このページの約束

1まず予想しよう

シミュレーターを動かす前に、直感で答えを選んでください。正解は、操作したあとに開いて確かめます。

予想1 45° でななめ上に投げたボールが最高点にあるとき、ボールの速さはどうなっている?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:イ 最高点で 0 になるのは速度の鉛直成分 vy だけです。水平成分 vx は投げてから着地までずっと同じ値なので、最高点の速さは vx の大きさ(= v0cosθ)です。シミュレーターの「最高点へ」ボタンで確かめられます。

予想2 同じ速さで、30° と 60° の 2 通りで投げます。水平に遠くまで届くのはどちら?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:ウ 60° は高く上がるぶん長い時間空中にいますが、水平方向の速さが小さくなります。30° は速く進むけれど早く落ちます。この 2 つの効果がちょうど打ち消し合い、到達距離は同じになります(理由は「4 式を書く」で説明します)。「軌跡を残す」ボタンを使うと、2 本の軌跡を重ねて比べられます。

予想3 飛んでいるあいだ、速度の水平成分はどう変わる?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:イ 空気抵抗を無視すると、ボールにはたらく力は鉛直下向きの重力だけです。水平方向には力がはたらかないので、水平方向は等速直線運動になります。「vx(水平成分)」の矢印の長さが変わらないことを見てみましょう。

2動かしてみよう

斜方投射のシミュレーション図 ボールの位置と軌跡、速度の矢印を表示します。

再生ボタンを押すと、ボールが動きます。

軌跡(実線) 残した軌跡(灰色の破線) v 速度(太い実線) vx 水平成分(破線) vy 鉛直成分(点線) 一定時間ごとの位置

投げ方
m/s
°

初速度は 5〜30 m/s(0.1 刻み)、角度は 5〜85°(1° 刻み)。数値欄に入力したら Enter で反映します(ほかのボタンを押したときも自動で反映します)。範囲外の値は範囲内に直します。

再生
0.00 s
s
表示

「軌跡を残す」を押してから角度や初速度を変えると、前の軌跡と比べられます(最大 3 本)。

いまの値

時刻 t0.00s
位置 x0.00m
位置 y0.00m
速度 vx0.00m/s
速度 vy0.00m/s
速さ |v|0.00m/s

vy がプラスなら上向き、マイナスなら下向きです。

式に数値を入れると

この投げ方の代表値

3観察のポイント

上から順に試して、気づいたことに印をつけていきましょう(印はこの画面の中だけで使い、保存はされません)。

  1. やってみる再生して、vx(破線の矢印)の長さを見る。○(一定時間ごとの位置)の横の間隔も見る。

    見るところvx の矢印の長さは変わらず、○の横の間隔はどこでも等しい。水平方向は等速直線運動です。

  2. やってみる「最高点へ」を押す。

    見るところvy(点線の矢印)が消え、速度 v の矢印は真横を向く。でもボールは止まっていない(vx が残っている)。

  3. やってみる−0.1 s / +0.1 s ボタンで少しずつ進め、vy の値を見る。

    見るところvy は 0.1 s ごとに 0.98 m/s ずつ減っていく(加速度 −9.8 m/s²)。○の縦の間隔は上りで縮み、下りで広がる。

  4. やってみる最高点から 0.5 s 前と 0.5 s 後の値を比べる。

    見るところ高さ y が同じで、vy は大きさが同じで向きが逆。上りにかかる時間と下りにかかる時間も同じ。

  5. やってみる30° で「軌跡を残す」を押し、角度を 60° にして再生する。

    見るところ着地点が重なる。60° のほうが高く上がり、長い時間空中にいる。

  6. やってみる最後まで再生して、速さ |v| を投げたときの v0 と比べる。

    見るところ速さは v0 と同じ。向きは、水平より θ だけ下を向いた斜め下向き(投げたときの向きを地面について折り返した向き)。

4式を書こう:斜方投射の公式

手順① 初速度を水平・鉛直に分ける(速度の分解)

初速度 v0 の矢印を、水平方向と鉛直方向の 2 本に分けます。v0 を斜辺とする直角三角形で考えると、斜辺以外で角度 θ をはさむ辺(水平)が cos、θ と向かい合う辺(鉛直)が sin です。迷ったら θ = 0°(真横に投げる)を考えましょう。水平成分は v0 そのものなので、cos 0° = 1 の cos が水平です。

$$v_{0x} = v_0\cos\theta, \qquad v_{0y} = v_0\sin\theta$$

手順② 方向ごとに「どんな運動か」を決める

水平方向(x)

力がはたらかない → 加速度 0 → 等速直線運動

$$v_x = v_0\cos\theta \quad(\text{一定})$$ $$x = v_0\cos\theta\cdot t$$

鉛直方向(y、上向きが正)

重力だけ → 加速度 −g → 鉛直投げ上げと同じ

$$v_y = v_0\sin\theta - g t$$ $$y = v_0\sin\theta\cdot t - \frac{1}{2}g t^2$$

上向きを正にしたので、下向きの重力加速度は −g として式に入ります。符号は「どちらを正にしたか」から決まります。

手順③ 条件を式にする

最高点の高さと時間 → 条件は「vy = 0」
$$0 = v_0\sin\theta - g t_1 \;\Rightarrow\; t_1 = \frac{v_0\sin\theta}{g}$$ $$H = v_0\sin\theta\cdot t_1 - \frac{1}{2}g t_1^{\,2} = \frac{(v_0\sin\theta)^2}{2g}$$
滞空時間(着地するまでの時間) → 条件は「y = 0(ただし t > 0)」
$$0 = t\left(v_0\sin\theta - \frac{1}{2}g t\right) \;\Rightarrow\; T = \frac{2v_0\sin\theta}{g} = 2t_1$$
水平到達距離(飛距離) → 「着地時刻 T での x」
$$R = v_0\cos\theta\cdot T = \frac{2v_0^{\,2}\sin\theta\cos\theta}{g} = \frac{v_0^{\,2}\sin 2\theta}{g}$$

T = 2t1 になるのは、投げた点と着地点が同じ高さのとき、運動が最高点を軸に左右対称だからです。鉛直方向は加速度が一定なので、地面から最高点の高さ H まで上る時間と、H から地面まで下りる時間は等しくなります。

なぜ 45° で飛距離が最大になるのか

同じ高さに着地し、空気抵抗がない場合、R = v02sin 2θ ÷ g です。初速度 v0 が同じなら、θ によって変わるのは sin 2θ だけです。sin 2θ の最大値は 1 で、それは 2θ = 90°、つまり θ = 45° のときです。角度を大きくすると滞空時間は長くなりますが水平方向の速さが小さくなり、角度を小さくするとその逆になります。2 つのバランスが最もよいのが 45° です。

30° と 60° で飛距離が同じになる理由

sin 2θ は θ と 90° − θ で同じ値になります(例:sin 60° = sin 120°)。そのため、30° と 60°、15° と 75° のように足して 90° になる 2 つの角度では、水平到達距離が同じになります。ただし最高点の高さと滞空時間は、角度の大きいほうが大きくなります。

軌道の式と、放物線になる理由

x の式から t = x ÷ (v0cosθ) とし、y の式に代入して t を消すと、軌道(通り道)の式が得られます。

$$y = \tan\theta\cdot x - \frac{g}{2v_0^{\,2}\cos^2\theta}\,x^2$$

y が x の 2 次関数で、x2 の係数が負なので、軌道は上に凸の放物線になります。x の係数 tanθ(= v0sinθ ÷ v0cosθ)は代入の計算から出てきて、ちょうど投げた瞬間の軌道の傾きに等しくなっています。

斜方投射の公式一覧

求めるもの式使う条件
水平方向の速度vx = v0cosθ(一定)水平方向は力なし
鉛直方向の速度vy = v0sinθ − gt加速度 −g
位置x = v0cosθ・t、y = v0sinθ・t − ½gt2
最高点の時刻t1 = v0sinθ ÷ gvy = 0
最高点の高さH = (v0sinθ)2 ÷ (2g)t = t1 の y
滞空時間T = 2v0sinθ ÷ g = 2t1y = 0、t > 0(同じ高さに着地)
水平到達距離(飛距離)R = v02sin 2θ ÷ gt = T の x
軌道の式y = tanθ・x − g x2 ÷ (2v02cos2θ)t を消去

公式を丸暗記するより、「水平は等速、鉛直は加速度 −g」から毎回導けるようにしておくと、条件が変わった問題(高いところから投げる、など)にも対応できます。

なぜ最高点で vy = 0 なのか

上昇中は vy > 0(上向き)、下降中は vy < 0(下向き)です。上向きから下向きに切りかわる一瞬が最高点で、そのとき vy = 0 です。vx は 0 にならないので、ボールは止まらずに横へ進んでいます。つまり斜め上に投げた場合(0° < θ < 90°)、最高点で速さは 0 になりません(速さ = v0cosθ)。

水平投射・鉛直投げ上げとの違い

斜方投射と水平投射は、まとめて放物運動と呼ばれます。鉛直投げ上げも含めて、どれも「水平方向は等速、鉛直方向は加速度 −g」で、違うのは初速度の向きだけです(鉛直投げ上げは θ = 90° の特別な場合とみなせます)。

斜方投射水平投射鉛直投げ上げ
投げる向き斜め上(角 θ)真横(θ = 0°)真上(θ = 90°)
初速度の水平成分v0cosθv00
初速度の鉛直成分v0sinθ(上向き)0v0(上向き)
よく出る場面地面から投げて地面に落ちる高いところから真横に投げる真上に投げて戻ってくる

斜方投射の速度と位置の式(vx, vy, x, y)で θ = 0° とすると水平投射、θ = 90° とすると鉛直投げ上げの式になります。ただし、最高点・滞空時間・水平到達距離の公式(H, T, R)は「同じ高さに着地する」ことが前提なので、そのまま水平投射には使えません。公式を 3 種類覚えるのではなく、初速度を分けてから同じ考え方で式を立てると覚える量が減ります。

このページは鉛直上向きを正にしているので、水平投射の鉛直方向は y = −½gt2 になります。水平投射では鉛直下向きを正にとる教科書も多いので、比べるときは座標の向きに注意してください。

用語の整理

投射角(仰角)
投げる向きと水平面とのなす角 θ。
水平到達距離(飛距離)
投げた点から着地点までの水平方向の距離(このページでは同じ高さに着地する場合の R)。教科書では「水平到達距離」と書かれることが多い量です。
滞空時間
投げてから着地するまでの時間 T。
最高点
軌道のいちばん高い点。速度の鉛直成分 vy が 0 になる点です。
放物運動
重力だけを受けて放物線を描く運動。水平投射と斜方投射がこれにあたります。真上に投げる鉛直投げ上げは、軌跡が直線になるので放物運動とは区別して扱われます(物理基礎の「落体の運動」で学びます)。

5確認問題

g = 9.8 m/s²、√3 = 1.73 として計算します。答えは有効数字 2 桁を目安にしてください(「20 m」などは 2 桁の意味で書いています)。解説を開く前に、紙に式を書いてみましょう。

シミュレーターは √3 などを正確な値で計算するため、小数第 2 位が手計算と少し違うことがあります。2 桁の答えは一致します。

問1〜問4 の条件:地面から、初速度 19.6 m/s、投射角 30° でボールを投げた。

問1 初速度を分ける

初速度の水平成分 v0x と鉛直成分 v0y を求めよ。

解説を見る
$$v_{0x} = 19.6\cos 30^\circ = 19.6\times\frac{\sqrt3}{2} = 9.8\sqrt3 \approx 17\ \text{m/s}$$ $$v_{0y} = 19.6\sin 30^\circ = 19.6\times\frac12 = 9.8\ \text{m/s}$$

θ をはさむ水平の辺が cos、向かいの鉛直の辺が sin です。

問2 最高点

最高点に達する時刻 t1 と、最高点の高さ H を求めよ。

解説を見る

最高点では vy = 0 です。

$$0 = 9.8 - 9.8\,t_1 \;\Rightarrow\; t_1 = 1.0\ \text{s}$$ $$H = 9.8\times1.0 - \frac12\times9.8\times1.0^2 = 4.9\ \text{m}$$

問3 水平到達距離

ボールが地面に着くまでの時間 T と、水平到達距離 R を求めよ。

解説を見る

同じ高さに戻るので、上りと下りの時間は等しく T = 2t1 = 2.0 s。水平方向は等速なので

$$R = v_{0x}\times T = 9.8\sqrt3\times2.0 = 19.6\sqrt3 \approx 34\ \text{m}$$

よくある誤り:R = v0x × t1(最高点までの時間)で計算してしまう。到達距離に使うのは着地までの時間です。

問4 途中の時刻

投げてから 1.5 s 後のボールについて、(1) 速度の鉛直成分 vy、(2) 上昇中か下降中か、(3) 地面からの高さ y を求めよ。

解説を見る
$$v_y = 9.8 - 9.8\times1.5 = -4.9\ \text{m/s}$$

(2) vy が負なので下向き、つまり下降中(最高点の 1.0 s を過ぎている)。

$$y = 9.8\times1.5 - \frac12\times9.8\times1.5^2 = 14.7 - 11.025 = 3.675 \approx 3.7\ \text{m}$$

シミュレーターで時刻を 1.50 s に合わせると確かめられます。

問5 角度と到達距離

初速度 14 m/s で投げる。(1) 45° で投げたときの水平到達距離を求めよ。(2) 30° と 60° で投げたときの到達距離を比べ、どちらが長く空中にいるか答えよ。

解説を見る
$$\text{(1)}\quad R = \frac{v_0^{\,2}\sin 90^\circ}{g} = \frac{14^2\times1}{9.8} = 20\ \text{m}$$ $$\text{(2)}\quad R_{30^\circ} = R_{60^\circ} = \frac{14^2\sin 60^\circ}{9.8} = 10\sqrt3 \approx 17\ \text{m}$$

到達距離は同じです。空中にいる時間 T = 2v0sinθ / g は sinθ が大きい 60° のほうが長い(30° は約 1.4 s、60° は約 2.5 s)。

斜方投射でよくある質問

Q. なぜ 45° で投げるといちばん遠くまで飛ぶのですか?
水平到達距離 R = v02sin 2θ ÷ g の sin 2θ が、θ = 45° のとき最大の 1 になるからです(投げた点と着地点が同じ高さで、空気抵抗がない場合)。シミュレーターで角度を 40°・45°・50° と変えて比べてみましょう。
Q. 空気抵抗があっても 45° がいちばん遠くまで飛びますか?
空気抵抗を受ける斜方投射の計算は高校物理の範囲外ですが、一般に、いちばん遠くまで飛ぶ角度は 45° より小さくなることが多いと知られています。このページの計算はすべて空気抵抗なしの条件です。
Q. 水平投射と斜方投射の違いは何ですか?
初速度の向きだけが違います。水平投射は真横に投げるので初速度の鉛直成分が 0、斜方投射は斜め上に投げるので鉛直成分 v0sinθ があります。考え方(水平は等速、鉛直は加速度 −g)は同じです。比較表も見てください。
Q. 着地までの時間が、最高点までの時間のちょうど 2 倍になるのはなぜですか?
運動が最高点を軸に左右対称だからです。ただし、これは投げた点と着地点が同じ高さのときだけ成り立ちます。
Q. 最高点で速さは 0 になりますか?
斜め上に投げた場合(0° < θ < 90°)はなりません。0 になるのは速度の鉛直成分 vy だけで、水平成分 v0cosθ は残っています(真上に投げた場合だけは、最高点で速さが 0 になります)。「最高点へ」ボタンで確かめられます。
Q. 初速度を分けるとき、sin と cos はどちらを使えばいいですか?
θ を水平面からの角度とすると、水平成分が v0cosθ、鉛直成分が v0sinθ です。迷ったら θ = 0°(真横に投げる)を考え、水平成分が v0 になるのは cos だと確かめましょう。問題によっては角度を鉛直方向から測っていることがあるので、図で必ず確認してください。
Q. 高いところ(ビルの屋上など)から斜めに投げたときはどうなりますか?
投げた点を原点にしたまま、地面を y = −h(h は投げた点の高さ)として、y = v0sinθ・t − ½gt2 = −h を解きます。2 次方程式になるので、2 つの解のうち t > 0 のほうが着地の時刻です(地面を原点にとり直して y = h + v0sinθ・t − ½gt2 = 0 としても同じです)。この場合は「着地時刻 = 最高点の時刻の 2 倍」は成り立ちません。
Q. 着地する直前の速さはどうなりますか?
同じ高さに着地する場合、速さは投げたときと同じ v0 で、向きは水平より θ だけ下向きです。速さについては、力学的エネルギー保存の法則からも同じ結果が得られます。

次のステップ

このページでは「なぜその式になるか」を体験しました。次は、自分の手で式を立てて解けるようになる段階です。