このページの約束

1まず予想しよう:中和点の pH はいつも 7?

シミュレーターを動かす前に、直感で答えを選んでください。正解は、操作したあとに開いて確かめます。

予想1 0.10 mol/L の酢酸 10 mL に、0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を加えていきます。ちょうど中和したときの pH は?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:ウ pH は 8.72 です。中和点は「酸と塩基が過不足なく反応した点」で、「中性になる点」ではありません。できた酢酸ナトリウムの水溶液が弱い塩基性を示します。

予想2 同じ濃度、同じ体積の塩酸と酢酸を、それぞれ同じ水酸化ナトリウム水溶液で中和します。必要な量はどうなる?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:イ どちらも 10.00 mL です。酢酸は少ししか電離していませんが、H+ が中和で使われると、残りの酢酸が次々に電離します。中和に必要な量は、酸の強さではなく、価数と物質量で決まります。

予想3 0.10 mol/L の塩酸 10 mL に、0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を加えます。9.95 mL から 10.05 mL まで、たった 2 滴で pH はどれくらい変わる?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:ウ pH は 3.60 から 10.40 まで、6.80 も変わります。pH は濃度の log なので、残った H+ が少なくなるほど、同じ 1 滴で大きく動きます。この急な変化を pH ジャンプといいます。

予想4 酸を入れるコニカルビーカーが、洗ったあとの純水でぬれていました。中和に必要な滴下量はどうなる?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:イ 水が増えても、ビーカーに入っている酸の物質量は同じだからです。濃度は下がるので、はじめの pH は変わりますが、中和に必要な滴下量は同じです。一方、ビュレットやホールピペットがぬれていると、結果が変わります。

2動かしてみよう:1 滴ずつ加えて pH を見る

グラフの点をドラッグするか、スライダーとボタンで滴下量を変えます。「濃度を当てる」では、pH を見ずに色だけを頼りに、本物の実験と同じように濃度を求めます。

滴定曲線 横軸が滴下量、縦軸が pH のグラフです。中和点、変色域、いまの点を表示します。
0.00 mL

いまの値

pH 1.00

酸が出す H⁺
塩基が受け取る H⁺

2 本の棒がそろうところが中和点です。酸や塩基の強さには関係しません。

中和点のまわりの pH(1 滴 = 0.05 mL)

溶液を選ぶ
指示薬
グラフの表示

残した曲線は破線で重なります。別の組み合わせや濃度と比べられます。

器具の水ぬれ

滴定曲線(実線) 残した曲線(破線) 中和点(四角) 指示薬の変色域(帯)

3観察のポイント:pH ジャンプと指示薬

上から順に試して、気づいたことに印をつけていきましょう(印はこの画面の中だけで使い、保存はされません)。

  1. やってみる「+1 滴」を押して、9.95 mL から 10.05 mL まで進める。

    見るところ10 mL の手前では、5 mL 加えても pH は 1.00 から 1.48 までしか動きません。ところが、9.95 mL から 10.05 mL の 2 滴で、3.60 から 10.40 まで動きます。

  2. やってみる塩酸の曲線と酢酸の曲線を重ねる。

    見るところ2 本の曲線は、はじめの pH も途中の形も違いますが、どちらも 10.00 mL で跳ね上がります。10.00 mL を過ぎると、水酸化ナトリウムが余るので、ほとんど同じ線になります。

  3. やってみる3 つの組み合わせで「中和点へ」を押す。

    見るところ中和点の pH は、順に 7.00、8.72、5.28 です。弱酸と強塩基なら塩基性側、強酸と弱塩基なら酸性側に傾きます。

  4. やってみる酢酸の滴定で、指示薬をメチルオレンジに変える。

    見るところ色が変わるのは 0.14〜3.11 mL で、中和点の 10.00 mL よりずっと手前です。ここで止めると、酢酸の濃度を本当の値の 3 分の 1 以下と求めてしまいます。フェノールフタレインに戻すと、10.00〜10.02 mL で色が変わります。

  5. やってみる酢酸にアンモニア水を加える。指示薬を順に変える。

    見るところ中和点の前後 2 滴で、pH は 6.81 から 7.19 までしか動きません。変色域の幅が 1.6 ある BTB でも、色が変わる間に 0.7 mL 以上進みます。どの指示薬でも正しく止められないので、この組み合わせでは指示薬を使う滴定をしません。

  6. やってみる塩酸と NaOH を、どちらも 0.010 mol/L にする。

    見るところ前後 1 滴の pH は 4.60〜9.40 にせまくなります(0.10 mol/L では 3.60〜10.40)。メチルオレンジの変色域がジャンプの外に出て、中和点より 1 mL 以上手前で色が変わり始めます。

  7. やってみる「コニカルビーカーの純水」を変える。

    見るところはじめの pH は 1.00 から 1.78 に上がりますが、中和点は 10.00 mL のままです。水が増えても、酸の物質量は変わらないからです。

  8. やってみる共洗いをしない場合に印をつけて、「求めた濃度」を見る。

    見るところビュレットがぬれていると滴下液が薄まり、滴下量が 11.11 mL に増えて、濃度を 0.111 mol/L と大きく求めてしまいます。ホールピペットがぬれていると、はかりとる酸が減り、滴下量が 9.00 mL に減って、0.090 mol/L と小さく求めてしまいます。

  9. やってみる硫酸に変えて、棒の横の数値を見る。

    見るところ同じ 0.10 mol/L、10 mL でも、硫酸は 1 mol から H+ を 2 mol 出すので、中和点は 20.00 mL です。棒の横の数値も、塩酸の 2 倍の 2.000 mmol になります。

  10. やってみる炭酸ナトリウムに塩酸を加える。指示薬を変えて見る。

    見るところ10.00 mL と 20.00 mL の 2 か所で pH が下がります。フェノールフタレインの赤は 1 段目のあたりで消え、メチルオレンジの色は 2 段目のあたりで変わります。

4式を書こう:中和の量的関係と濃度の求め方

酸が出す H+ の物質量と、塩基が受け取る H+ の物質量が等しくなる点が中和点です。価数を a、b、濃度を c、c′、体積を V、V′ とすると、次の式が成り立ちます。

$$a \times c \times V = b \times c' \times V'$$

左が酸、右が塩基です。両辺に同じ単位の体積を使えば、mL のままで計算できます(mol/L × mL = mmol)。酸や塩基の強さは式に入りません。これがシミュレーターの 2 本の棒です。

例:濃度の分からない硫酸の濃度を求める

濃度の分からない硫酸 10.0 mL を、0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で滴定すると、中和点までに 16.0 mL 必要でした。硫酸は 2 価、水酸化ナトリウムは 1 価なので、硫酸の濃度を c とすると

$$2 \times c \times 10.0 = 1 \times 0.10 \times 16.0$$ $$c = 0.080\ \text{mol/L}$$

アンモニアの価数 アンモニアは水酸化物イオンを持っていませんが、NH3 1 mol が H+ 1 mol を受け取るので、1 価の塩基です。炭酸ナトリウムは Na2CO3 1 mol が H+ 2 mol を受け取るので、2 価の塩基として扱います。

中和滴定の器具と手順:共洗いが必要な器具は?

ホールピペット メスフラスコ コニカルビーカー ビュレット
器具使い方純水でぬれていたら
ホールピペット決まった体積の溶液を正確にはかりとる共洗いする。水が残ると、中の溶液が薄まり、はかりとる物質量が減る
ビュレット滴下した体積を 0.01 mL まで読む共洗いする。水が残ると滴下液が薄まり、滴下量が増える
メスフラスコ決まった体積の溶液を正確につくるぬれたまま使ってよい。標線まで純水を入れるので、物質量も体積も変わらない
コニカルビーカーはかりとった溶液を入れ、滴下を受けるぬれたまま使ってよい。入っている物質量が変わらない。中の溶液で共洗いしてはいけない(壁に残った分だけ物質量が増える)

共洗いは、これから入れる溶液で器具の内側を数回すすぐことです。ホールピペットとビュレットは、中に入れた溶液の濃度をそのまま使うので必要です。また、ホールピペット、ビュレット、メスフラスコは、目盛りが正確でなくなるので、加熱して乾かしません。

手順

  1. ホールピペットで、濃度を知りたい溶液をコニカルビーカーにはかりとり、指示薬を数滴加える。
  2. 濃度の分かっている溶液をビュレットに入れ、はじめの目盛りを読む。先の部分の空気を抜いておく。
  3. ビーカーを振りながら少しずつ滴下する。色が変わりかけたら 1 滴ずつ加え、振っても色が消えなくなったら止めて、目盛りを読む(終点)。
  4. 何回かくり返して、滴下量の平均を使う。

指示薬の色が変わって滴定を止めるところを終点といいます。中和点は計算で決まる点、終点は実験で見る点です。この 2 つが近くなるように指示薬を選びます。

滴定曲線の読み方:4 つの組み合わせと pH ジャンプ

滴定曲線は、横軸を滴下量、縦軸を pH にしたグラフです。4 つとも、0.10 mol/L の酸 10 mL に、0.10 mol/L の塩基を加えたときの、このページの定数での計算値です。

組み合わせはじめの pH中和点の pH前後 1 滴の pH中和点の液性
強酸×強塩基
塩酸+NaOH
1.007.003.60〜10.40中性
弱酸×強塩基
酢酸+NaOH
2.888.727.04〜10.40塩基性
強酸×弱塩基
塩酸+NH₃
1.005.283.60〜6.95酸性
弱酸×弱塩基
酢酸+NH₃
2.887.006.81〜7.19中性(酢酸の Ka とアンモニアの Kb が同じ値のため)

なぜ中和点で急に変わるのか

pH は水素イオン濃度の桁を表す数です。余っている H+ が 10 分の 1 になると、pH は 1 上がります。塩酸の滴定では、はじめ 1.00 mmol ある H+ を 0.90 mmol 中和しても、残りはまだ 10 分の 1 で、体積の増加を除くと pH は 1 しか上がりません。ところが、最後の数滴では、残りの H+ が次々に 10 分の 1 になるので、pH が大きく動きます。中和点を過ぎると、今度は OH− が 0 から増えていくので、やはり最初の数滴で大きく動きます。

なぜ弱酸の曲線は途中がなだらかなのか

酢酸に水酸化ナトリウムを少し加えると、酢酸と酢酸イオンが両方ある溶液になります。ここに OH− が来ると、残っている酢酸が H+ を出して打ち消すので、pH があまり変わりません。これが緩衝作用で、曲線のなだらかな部分です。

なぜ中和点が中性にならないのか

酢酸と水酸化ナトリウムからは酢酸ナトリウムができます。酢酸イオンは水から少し H+ を受け取り、OH− が増えるので、弱い塩基性になります(塩の加水分解)。塩酸とアンモニアからできる塩化アンモニウムでは、アンモニウムイオンが H+ を出すので、弱い酸性になります。

指示薬の選び方:変色域が pH ジャンプの中にあるものを選ぶ

指示薬の色は、変色域と呼ばれる pH の範囲で変わります。中和点に近い滴下量で色が変わるのは、変色域が pH ジャンプの中にほぼ入っている指示薬です。

指示薬変色域酸性側の色 → 塩基性側の色
フェノールフタレイン8.3〜10.0無色 → 赤
ブロモチモールブルー(BTB)6.0〜7.6黄 → 青(途中は緑)
メチルレッド4.4〜6.2赤 → 黄
メチルオレンジ3.1〜4.4赤 → 黄(途中は橙)

計算で確かめた指示薬の判定

どれも 0.10 mol/L の酸 10 mL に 0.10 mol/L の塩基を加えるとします。変色域の両端になる滴下量が、中和点からどれだけずれるかで判定しました。ずれが中和点の 1 % 以内を ◎、2 % 以内を ○、それより大きければ × とします。これはこのページの目安です。シミュレーターで塩基に酸を加えるときは、フェノールフタレインは赤が消える pH 8.3 だけで見ます。判定は、このページの定数と変色域での結果です。

組み合わせPPBTBMRMO
強酸×強塩基◎◎◎○
弱酸×強塩基◎×××
強酸×弱塩基××◎○
弱酸×弱塩基××××

PP:フェノールフタレイン、BTB:ブロモチモールブルー、MR:メチルレッド、MO:メチルオレンジ。

定数や変色域の値が資料によって少し違っても、上の 4 つの結論は変わりません。変わるのは、強酸×弱塩基の BTB の判定だけです。BTB はこの表では × ですが、ずれが目安の 2 % の近くにあり、値のとり方で ○ にもなります。

ジャンプと変色域の重なり方は、濃度でも変わります。塩酸と水酸化ナトリウムをどちらも 0.010 mol/L にすると、メチルオレンジは大きくずれて × になります。フェノールフタレインは、変色域の上の端が 10.20 mL(2.02 %)で目安の 2 % の境目にあり、このページの値では × です。値のとり方で ○ にもなります。BTB は ◎ のままです()。

滴定曲線の pH の計算:酢酸と水酸化ナトリウム(化学)

化学では、曲線の代表的な点の pH を計算できます。0.10 mol/L の酢酸 10 mL に、0.10 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を加えます(Ka = 1.8×10−5 mol/L、log101.3 = 0.11、log101.8 = 0.26、log102 = 0.30、log105.3 = 0.72)。

① はじめ(0 mL):弱酸の電離

電離度が小さいので、[H+] = √(cKa) で近似します。

$$[\mathrm{H^+}] = \sqrt{0.10 \times 1.8\times10^{-5}} \approx 1.3\times10^{-3}\ \text{mol/L}$$ $$\mathrm{pH} = 3 - \log_{10}1.3 \approx 2.9$$

シミュレーターの 2.88 は、近似を使わずに解いた値です。

② 半分まで中和(5 mL):緩衝液

酢酸と酢酸イオンの濃度が等しくなります。電離定数の式で、[CH3COO−] と [CH3COOH] が約分されるので、[H+] = Ka です。

$$K_a = \frac{[\mathrm{CH_3COO^-}][\mathrm{H^+}]}{[\mathrm{CH_3COOH}]}$$ $$[\mathrm{H^+}] = K_a = 1.8\times10^{-5}\ \text{mol/L}$$ $$\mathrm{pH} = 5 - \log_{10}1.8 = 4.74$$

この点は濃度を変えてもほとんど動きません。滴定曲線から Ka を読み取れるということです。シミュレーターの 4.75 は、log の値を丸めず、溶液の中の H+ の分も入れて解いた値です()。

③ 中和点(10 mL):塩の加水分解

酢酸ナトリウムの濃度は 1.0 mmol ÷ 20 mL = 0.050 mol/L です。酢酸イオンの反応の定数は Kb = Kw ÷ Ka です(アンモニアの Kb とは別の値です)。

$$K_b = \frac{1.0\times10^{-14}}{1.8\times10^{-5}} \approx 5.6\times10^{-10}\ \text{mol/L}$$ $$[\mathrm{OH^-}] = \sqrt{0.050 \times 5.6\times10^{-10}} \approx 5.3\times10^{-6}\ \text{mol/L}$$ $$\mathrm{pOH} = 6 - \log_{10}5.3 = 5.28,\quad \mathrm{pH} = 8.72$$

④ 中和点のあと(15 mL):余った NaOH

酢酸イオンの反応は無視できるので、余った水酸化ナトリウムだけで考えます。余りは 0.10 × 5 = 0.50 mmol で、全体は 25 mL です。

$$[\mathrm{OH^-}] = \frac{0.50}{25} = 0.020\ \text{mol/L}$$ $$\mathrm{pOH} = 2 - \log_{10}2 = 1.70,\quad \mathrm{pH} = 12.30$$

シミュレーターの値は 12.30 です()。

炭酸ナトリウムの二段階の中和(発展)

炭酸ナトリウムに塩酸を加えると、次の順に反応します。

$$\mathrm{Na_2CO_3 + HCl \to NaHCO_3 + NaCl}$$ $$\mathrm{NaHCO_3 + HCl \to NaCl + H_2O + CO_2}$$

1 段目の終わり(炭酸水素ナトリウムができる点)の pH は 8.34、2 段目の終わりの pH は 3.91 です(0.10 mol/L の炭酸ナトリウム 10 mL、0.10 mol/L の塩酸、二酸化炭素が溶液に残るとしたとき)。だから、1 段目はフェノールフタレインの赤が消えるところで、2 段目はメチルオレンジの色が変わるところで読みます。

1 段目の滴下量と 2 段目までの滴下量の比は 1 : 2 です。水酸化ナトリウムが混ざっていると 1 段目の滴下量が増えるので、この差から混ざっている量を求められます。

5確認問題

25 ℃ の水溶液とします。解説を開く前に、紙に式を書いてみましょう。

問1 2 価の酸の濃度を求める

濃度の分からない硫酸 20.0 mL を、0.150 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で滴定すると、中和点までに 24.0 mL 必要だった。硫酸のモル濃度を求めよ。

解説を見る

硫酸は 2 価、水酸化ナトリウムは 1 価です。

$$2 \times c \times 20.0 = 1 \times 0.150 \times 24.0$$ $$c = 0.0900\ \text{mol/L}$$

問2 固体から溶液をつくる

シュウ酸二水和物 (COOH)2・2H2O(式量 126)1.26 g を水に溶かして 200 mL にした。この溶液 10.0 mL を、濃度の分からない水酸化ナトリウム水溶液で滴定すると、中和点までに 12.5 mL 必要だった。(1) シュウ酸水溶液のモル濃度、(2) 水酸化ナトリウム水溶液のモル濃度を求めよ。

解説を見る

(1) 水和水を含めた式量 126 で物質量を求めます。1.26 ÷ 126 = 0.0100 mol です。水に溶かすと (COOH)2 が 0.0100 mol になります。

$$\frac{0.0100\ \text{mol}}{0.200\ \text{L}} = 0.0500\ \text{mol/L}$$

(2) シュウ酸は 2 価です。

$$2 \times 0.0500 \times 10.0 = 1 \times c \times 12.5$$ $$c = 0.0800\ \text{mol/L}$$

問3 薄めて滴定する

市販の食酢を正確に 10 倍に薄めた。この溶液 10.0 mL を、0.100 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液で滴定すると、中和点までに 7.20 mL 必要だった。食酢の酸はすべて酢酸(分子量 60)とし、食酢の密度を 1.0 g/cm3 とする。もとの食酢の (1) 酢酸のモル濃度、(2) 質量パーセント濃度を求めよ。

解説を見る

(1) 薄めた溶液の濃度を c とします。酢酸は 1 価です。

$$1 \times c \times 10.0 = 1 \times 0.100 \times 7.20$$ $$c = 0.0720\ \text{mol/L}$$

もとの食酢は 10 倍なので 0.720 mol/L です。

(2) 食酢 1 L(質量 1000 g)に酢酸は 0.720 × 60 = 43.2 g 含まれます。43.2 ÷ 1000 × 100 = 4.3 % です。

問4 器具の水ぬれ

濃度の分からない塩酸を、ホールピペットでコニカルビーカーにはかりとり、水酸化ナトリウム水溶液で滴定して濃度を求める。次の器具が純水でぬれたままだと、求めた塩酸の濃度は本当の値より大きくなるか、小さくなるか、変わらないか。(1) ホールピペット、(2) コニカルビーカー、(3) ビュレット

解説を見る

(1) 小さくなる。はかりとる塩酸が薄まって H+ の物質量が減り、滴下量が少なくなります。

(2) 変わらない。ビーカーに入っている H+ の物質量が変わらないからです。

(3) 大きくなる。滴下液が薄まるので滴下量が増えますが、計算ではもとの濃度を使うからです。

問5 指示薬を選ぶ

この問題では、変色域をフェノールフタレイン 8.3〜10.0、メチルオレンジ 3.1〜4.4 とする。次の滴定に、フェノールフタレインとメチルオレンジのどちらを使うのが適切か。どちらでもよいときは「どちらでもよい」と答えよ。理由も述べよ。(1) 酢酸に水酸化ナトリウム水溶液を加える、(2) 塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加える、(3) アンモニア水に塩酸を加える

解説を見る

(1) フェノールフタレイン。弱酸と強塩基なので、中和点は塩基性で、ジャンプも塩基性側にあります。メチルオレンジは中和点のずっと手前で色が変わります。

(2) どちらでもよい。強酸と強塩基なので、ジャンプが広く、両方の変色域がほぼ入ります。

(3) メチルオレンジ。強酸と弱塩基なので、中和点は酸性で、ジャンプも酸性側にあります。向きが逆で pH は下がっていきますが、選び方は同じです。

問6 二段階の中和(発展)

濃度の分からない炭酸ナトリウム水溶液 10.0 mL に、フェノールフタレインを加えて 0.10 mol/L の塩酸で滴定すると、赤色が消えるまでに 5.0 mL 必要だった。(1) 炭酸ナトリウムのモル濃度を求めよ。(2) 続けてメチルオレンジを加えて滴定すると、色が変わるまでに塩酸をさらに何 mL 加えることになるか。

解説を見る

(1) 1 段目では Na2CO3 と HCl が 1 : 1 で反応します。c × 10.0 = 0.10 × 5.0 より、0.050 mol/L です。

(2) 1 段目でできた NaHCO3 は Na2CO3 と同じ物質量なので、2 段目も同じ量の塩酸を使います。さらに 5.0 mL です。

問7 中和点の pH(化学)

0.20 mol/L の酢酸 10 mL に、0.20 mol/L の水酸化ナトリウム水溶液を加える。この問題では、酢酸の電離定数を Ka = 1.8×10−5 mol/L、Kw = 1.0×10−14 (mol/L)2、log101.8 = 0.26、log107.5 = 0.88 とする。(1) 5.0 mL 加えたときの pH、(2) 中和点の pH を、小数第 1 位まで求めよ。

解説を見る

(1) 半分まで中和した点なので、[H+] = Ka です。pH = 5 − 0.26 = 4.74 より、pH 4.7 です。シミュレーターの値は 4.74 です。

(2) 酢酸ナトリウムの濃度は 2.0 mmol ÷ 20 mL = 0.10 mol/L です。

$$K_b = \frac{1.0\times10^{-14}}{1.8\times10^{-5}} \approx 5.6\times10^{-10}$$ $$[\mathrm{OH^-}] = \sqrt{0.10 \times 5.6\times10^{-10}} \approx 7.5\times10^{-6}$$ $$\mathrm{pOH} = 6 - 0.88 = 5.12$$

pH = 14 − 5.12 = 8.88 より、pH 8.9 です。シミュレーターの値は 8.9 です。

中和滴定でよくある質問・間違えやすいところ

Q. 中和点と中性は何が違いますか?
中和点は、酸が出す H+ と塩基が受け取る H+ の物質量が等しくなる点です。中性は pH = 7(25 ℃)の状態です。強酸と強塩基では重なりますが、酢酸と水酸化ナトリウムでは中和点が pH 8.72 で、中性ではありません。
Q. 中和点と終点は何が違いますか?
中和点は量的関係で決まる点、終点は指示薬の色の変化で滴定を止めた点です。指示薬を正しく選べば、終点は中和点のごく近くに来ます。
Q. 弱酸なのに、なぜ強酸と同じ量の塩基が必要なのですか?
H+ が中和で減ると、電離の平衡が右に進み、残りの酢酸が電離するからです。最後にはすべての酢酸が反応します。必要な量は、電離している量ではなく、酸全体の物質量で決まります。
Q. なぜ弱酸×弱塩基では中和滴定をしないのですか?
中和点のまわりの pH の変化が小さく、色が変わる間に滴下量が大きく進むからです。指示薬の色の変化で中和点を正確に読み取れません。
Q. なぜ酢酸にメチルオレンジを使ってはいけないのですか?
変色域の 3.1〜4.4 は、このページの定数で計算すると、酢酸の滴定の 0.14〜3.11 mL にあたり、中和点の 10.00 mL のずっと手前です。その時点で止めると、酢酸の濃度を実際よりずっと小さく求めてしまいます。
Q. なぜコニカルビーカーは共洗いしないのですか?
中に入っている物質量が大切だからです。共洗いをすると、壁に残った溶液の分だけ物質量が増えて、滴下量が多くなってしまいます。純水でぬれているだけなら、物質量は変わらないので問題ありません。
Q. 指示薬はたくさん入れたほうが見やすいですか?
入れるのは数滴です。指示薬自体が弱い酸や弱い塩基なので、多く入れると中和に使われる量が無視できなくなります。
Q. ビュレットの先の空気を抜くのはなぜですか?
先に空気が残っていると、滴定の途中で空気が抜けたときに、その分だけ目盛りが余分に下がるからです。滴下していない量まで読んでしまいます。
Q. 炭酸ナトリウムの中和が 2 段階なのはなぜですか?
炭酸イオンは 2 個の H+ を順に受け取ります。CO32− は HCO3− より H+ を受け取りやすいので、先に CO32− が反応し、それが終わってから HCO3− が反応します。
Q. シュウ酸も 2 価なのに、なぜジャンプが 1 回に見えるのですか?
2 つの電離定数の比(K1 ÷ K2)が炭酸より小さく、1 段目の終わりで pH がはっきり跳ねないからです。中和の量は 2 価として計算し、指示薬はフェノールフタレインを使います。

よくある間違い

検算のこつ 計算の前に、中和点の滴下量を大まかに予想しましょう。同じ濃度の 1 価の酸と 1 価の塩基なら、滴下量は酸の体積と同じです。2 価の酸なら 2 倍、滴下液の濃度が 2 倍なら半分です。

次のステップ

このページでは「なぜそうなるか」を、1 滴ずつ動かして確かめました。次は、問題を自分の手で解く段階です。上の確認問題を、解説を閉じて、もう一度解いてみましょう。

量の計算、指示薬の選び方、二段階の中和までを段階的に並べた演習教材(PDF・問題 10 問と解答解説、有料)を note で販売しています。

演習教材(note)を見る

解説記事:note の解説記事を読む

酸と塩基の学習は、化学で緩衝液と塩の加水分解を計算する内容へ続きます。pH の計算の節の ② と ③ は、その入り口です。