このページの約束
- 扱う気体:理想気体として考えます。分子そのものの大きさと、分子どうしが引き合う力を無視した気体です。ふつうの温度と圧力の気体は、これでよく表せます。
- 単位:圧力 P は Pa、体積 V は L、絶対温度 T は K、物質量 n は mol です。質量 w は g、モル質量 M は g/mol、密度 d は g/L で書きます。
- 温度:°C で表した温度を t とすると、T = t + 273 です。
- 気体定数:R = 8.31×10³ Pa·L/(K·mol) を使います。資料によって値が少し違います。問題文に値があれば、その値を使ってください。
- 標準状態:0 °C、1.013×10⁵ Pa のことです。
- 数値:シミュレーターの小数は丸めて表示します。粒子の数、大きさ、速さは模式図で、本当の値とは違います。
1まず予想しよう:10 °C を 20 °C にすると、体積は 2 倍?
シミュレーターを動かす前に、直感で答えを選んでください。正解は、操作したあとに開いて確かめます。
2動かしてみよう:ピストンの中の気体
まず、何を一定にするかを選びます。ピストンを指やマウスで左右に動かすか、スライダーを動かすと、もう一方の量が式で決まります。「状態 1」は比べるもとの状態で、モードを切り替えたときに、その時点の状態になります。
右の矢印の長さが、外から押す圧力の大きさです(V 一定のモードでは、ピストンを止めているので出しません)。粒子の図は模式図です。
いまの状態(塗った丸)
状態 1(白丸)
いまの条件の線(実線)
状態 1 の線(破線)
直線を 0 K までのばした部分(点線)
粒子で見ると:圧力は「回数 × 強さ」
ぶつかる回数
1 回の強さ
圧力
状態 1 を 1 としたときの倍率です(棒の右端が 4 倍)。体積が同じなら、温度を上げると粒子が速くなって、回数も強さも増えます。
ボイル・シャルルの法則:P・V・T が同時に変わるとき
物質量が一定なら、P、V、T が同時に変わっても、次の式が成り立ちます。これをボイル・シャルルの法則といいます。
$$\frac{PV}{T} = \text{一定}$$
$$\frac{P_1V_1}{T_1} = \frac{P_2V_2}{T_2}$$
2 段階に分けて変化させると導けます。はじめに温度 T₁ のまま圧力を P₂ にして、体積を V′ にします(ボイル)。次に圧力 P₂ のまま温度を T₂ にして、体積を V₂ にします(シャルル)。
$$P_1V_1 = P_2V'$$
$$\frac{V'}{T_1} = \frac{V_2}{T_2}$$
2 つの式から V′ を消すと、上の式になります。T₁ = T₂ なら T が消えてボイルの法則に、P₁ = P₂ なら P が消えてシャルルの法則に戻ります。つまりこの式を 1 つ覚えておけば、一定のものを消すだけで済みます。
解き方の例
27 °C、1.0×10⁵ Pa で 9.0 L の気体を、87 °C で 3.0 L にしたときの圧力を求めます。温度を K に直すと、300 K と 360 K です。
$$\frac{1.0\times10^5 \times 9.0}{300} = \frac{P_2 \times 3.0}{360}$$
$$P_2 = 3.6\times10^5\ \text{Pa}$$
気体の状態方程式 PV = nRT と気体定数 R
PV/T の一定の値は、物質量 n に比例します。同じ温度と圧力なら、体積が物質量に比例するからです(アボガドロの法則)。比例定数を R とすると、次の式になります。これを気体の状態方程式といいます。
$$\frac{PV}{T} = nR$$
$$PV = nRT$$
R を気体定数といいます。気体の種類によらない定数です。標準状態(273 K、1.013×10⁵ Pa)で 1 mol の気体が 22.4 L を占めることから、値が求まります。
$$R = \frac{PV}{nT}$$
$$= \frac{1.013\times10^5 \times 22.4}{1 \times 273}$$
$$\approx 8.31\times10^3\ \text{Pa·L/(K·mol)}$$
シミュレーターの「P×V÷(n×T)」の欄は、どう動かしても 8.31×10³ のままです。
R の単位と、数値が違って見えるわけ
R の数値は、P と V の単位で変わります。式に入れる P と V の単位は、R の単位にそろえます。
物理の教科書に出てくる 8.31 J/(mol·K) は、3 行目と同じ値です。1 Pa·m³ = 1 J で、1 m³ = 1000 L なので、L で表すと 1000 倍の 8.31×10³ になります。
解き方の例
0.25 mol の気体が、127 °C、1.0×10⁵ Pa で占める体積を求めます。
$$V = \frac{nRT}{P}$$
$$= \frac{0.25 \times 8.31\times10^3 \times 400}{1.0\times10^5}$$
$$\approx 8.3\ \text{L}$$
分子量と密度の求め方:PV = (w/M)RT
物質量は、質量 w [g] とモル質量 M [g/mol] から n = w/M と書けます。M の数値が分子量です。状態方程式の n に入れると、次の形になります。
$$PV = \frac{w}{M}RT$$
$$M = \frac{wRT}{PV}$$
気体の質量、体積、温度、圧力を測れば、分子量が求まります。また、密度 d = w/V [g/L] を使って書き直すと、次のようになります。
$$d = \frac{w}{V} = \frac{PM}{RT}$$
密度は、圧力に比例し、絶対温度に反比例し、分子量に比例します。同じ温度と圧力なら、分子量の大きい気体ほど密度が大きくなります。気体の種類によって変わるのは、ここです。
解き方の例
ある気体 1.6 g が、27 °C、1.0×10⁵ Pa で 1.25 L を占めるとき、分子量を求めます。
$$M = \frac{1.6 \times 8.31\times10^3 \times 300}{1.0\times10^5 \times 1.25}$$
$$\approx 32$$
分子量 32 なので、酸素 O₂ と同じ値です。分子量に単位はつきません。モル質量なら 32 g/mol です。
グラフの読み方:P–V、V–T、P–T
同じ法則でも、軸によって形が変わります。「何が一定の線か」と「原点を通るか」を見ましょう。
V–t のグラフ(模式図)。比例ではなく、1 次関数です
「V は t に比例する」は誤りです。V は t の 1 次関数で、T に比例します。横軸を K で読むと、縦軸が −273 °C の位置に動いて、原点を通る比例になります。
どの式を使う?ボイル・シャルルの法則と状態方程式の選び方
問題文を読んだら、次の順に確かめます。
まず確かめること 3 つ ① 気体の量は変わるか。② 温度は K に直したか。③ P と V の単位は R の単位とそろっているか。
口の開いた容器を温めると、圧力は大気圧、体積は容器の大きさのままで、気体の一部が外へ出ます。PV が一定なので、nT が一定になります。27 °C を 127 °C にすると、n は 300/400 = 3/4 倍で、はじめの 1/4 が外へ出ます。出ていった分も容器の中と同じ温度と圧力になると考えれば、全体の量は同じなので、シャルルの法則でも解けます。全体の体積が 4/3 倍になり、容器に残るのはその 3/4 です。
なぜ成り立つ?粒子で見る圧力と温度
気体の圧力は、たくさんの分子が壁にぶつかることで生まれます。圧力の大きさは、同じ時間にぶつかる回数と、1 回の強さで決まります。
絶対温度は、分子の運動の激しさ(分子全体が移動する運動エネルギーの平均)に比例します。だから、T を 2 倍にすると、速さは √2 ≈ 1.41 倍になり、回数と強さの両方が増えて、圧力は 2 倍になります。同じ温度なら、この運動エネルギーの平均は気体の種類によらないので、軽い分子ほど速く動きます。これで、種類によらず同じ関係になることも説明できます。
0 K に近づくと、分子の運動が止まる方向へ向かいます。これが「0 K より低い温度はない」という意味です。
理想気体と実在気体
実際の気体(実在気体)は、分子に大きさがあり、分子どうしが少し引き合います。そのため、低温や高圧では PV = nRT からずれて、やがて液体になります。高校の計算問題では、ことわりがなければ理想気体として扱います。
5確認問題
気体はすべて理想気体とし、気体定数は R = 8.31×10³ Pa·L/(K·mol) とします。答えは有効数字 2 桁で、温度は整数で書きましょう。解説を開く前に、紙に式を書いてみましょう。
問1 温度を換算する
(1) 127 °C と −23 °C を絶対温度で表せ。(2) 500 K は何 °C か。(3) 気体の温度を 20 °C から 50 °C へ上げた。温度の変化は何 K か。
解説を見る
(1) T = t + 273 より、127 + 273 = 400 K、−23 + 273 = 250 K です。
(2) t = T − 273 = 500 − 273 = 227 °C です。
(3) 目盛りの間隔が同じなので、差はそのままで 30 K です。293 K から 323 K への変化と考えても同じです。
問2 ボイルの法則
2.0×10⁵ Pa で 6.0 L の気体がある。温度を変えずに、(1) 体積を 8.0 L にしたときの圧力、(2) 圧力を 3.0×10⁵ Pa にしたときの体積を求めよ。
解説を見る
温度と物質量が一定なので、P₁V₁ = P₂V₂ です。P₁V₁ = 2.0×10⁵ × 6.0 = 12×10⁵ Pa·L です。
(1) P₂ = 12×10⁵ ÷ 8.0 = 1.5×10⁵ Pa
(2) V₂ = 12×10⁵ ÷ (3.0×10⁵) = 4.0 L
問3 シャルルの法則
27 °C で 6.0 L の気体がある。圧力を変えずに、(1) 127 °C にしたときの体積、(2) 体積を 4.5 L にしたときの温度 [°C] を求めよ。
解説を見る
まず温度を K に直します。27 °C は 300 K、127 °C は 400 K です。
(1) V₂ = 6.0 × 400 ÷ 300 = 8.0 L
(2) T₂ = 300 × 4.5 ÷ 6.0 = 225 K なので、t = 225 − 273 = −48 °C です。
問4 ボイル・シャルルの法則
27 °C、1.0×10⁵ Pa で 9.0 L の気体を、87 °C で 3.0 L にした。圧力は何 Pa か。
解説を見る
物質量が一定なので、ボイル・シャルルの法則を使います。温度は 300 K と 360 K です。
$$P_2 = \frac{P_1V_1}{T_1}\times\frac{T_2}{V_2}$$
$$= \frac{1.0\times10^5 \times 9.0}{300}\times\frac{360}{3.0}$$
$$= 3.6\times10^5\ \text{Pa}$$
体積が 1/3 倍で圧力は 3 倍、温度が 1.2 倍で圧力は 1.2 倍になり、合わせて 3.6 倍です。答えは 3.6×10⁵ Pa です。
問5 状態方程式
0.25 mol の気体が、127 °C、1.0×10⁵ Pa で占める体積は何 L か。
解説を見る
mol が出てくる 1 つの状態なので、PV = nRT を使います。
$$V = \frac{0.25\times 8.31\times10^3\times 400}{1.0\times10^5}$$
$$\approx 8.3\ \text{L}$$
答えは 8.3 L です。
問6 分子量を求める
ある気体 1.6 g が、27 °C、1.0×10⁵ Pa で 1.25 L を占める。この気体の分子量を求めよ。
解説を見る
質量が与えられているので、n = w/M を入れた式を使います。
$$M = \frac{wRT}{PV}$$
$$= \frac{1.6\times 8.31\times10^3\times 300}{1.0\times10^5\times 1.25}$$
$$\approx 32$$
分子量は 32 です。
問7 密度を比べる
二酸化炭素 CO₂(分子量 44)の密度を、(1) 27 °C、1.0×10⁵ Pa、(2) 標準状態(1 mol が 22.4 L を占めるとして)で、それぞれ求めよ。
解説を見る
(1) d = PM/(RT) に入れます。
$$d = \frac{1.0\times10^5\times 44}{8.31\times10^3\times 300}$$
$$\approx 1.8\ \text{g/L}$$
(2) 1 mol の質量 44 g が 22.4 L を占めるので、44 ÷ 22.4 ≈ 1.96 で、2.0 g/L です。温度が低く、圧力が少し高いので、(1) の 1.8 g/L より大きくなります。
気体の法則でよくある質問・間違えやすいところ
よくある質問
- Q. なぜ °C ではなく K を使うのですか?
- 体積や圧力が比例するのが、絶対温度だからです。°C の 0 は水がこおる温度という決め方で、気体の運動が止まる温度ではありません。そのため、°C のままでは比例の式になりません。
- Q. 273 と 273.15 のどちらを使いますか?
- より正確には T = t + 273.15 ですが、高校の計算では、ことわりがなければ 273 を使います。このページも 273 です。
- Q. ボイル・シャルルの法則と状態方程式は、どう使い分けますか?
- 前と後の比較で気体の量が変わらないなら、ボイル・シャルルの法則が楽です。mol、質量、分子量が出てくるとき、気体の量が変わるときは、状態方程式を使います。
- Q. R の値が 8.31 と 8.31×10³ の 2 つあるのはなぜですか?
- 単位が違うからです。圧力が Pa のとき、体積を m³ で表すと 8.31、L で表すと 1000 倍の 8.31×10³ です。化学では L を使うことが多いので、後の値をよく使います。
- Q. 8.3×10³ を使う問題もありますが、答えは変わりますか?
- 資料によって値が少し違います。問題文に値があれば、その値を使ってください。有効数字 2 桁くらいの答えなら、ふつうは同じになります。
- Q. 体積の単位が mL、圧力の単位が kPa のときは?
- 式に入れる前に、R の単位にそろえます。250 mL は 0.25 L、50 kPa は 5.0×10⁴ Pa です。ボイル・シャルルの法則では、両辺で単位がそろっていれば、L のままでも mL のままでもかまいません。
- Q. 標準状態とは何ですか?
- 0 °C、1.013×10⁵ Pa の状態です。このとき、気体 1 mol の体積は種類によらず約 22.4 L です。22.4 L/mol を使えるのは、この状態のときだけです。
- Q. 温度を上げると体積が増えるのは、分子が大きくなるからですか?
- 違います。分子の大きさは変わりません。分子が速く動いて、壁を強く押すので、圧力を一定に保つには、ピストンが外へ動きます。増えるのは、分子と分子の間の空間です。
- Q. 重い気体も軽い気体も、同じ圧力になるのはなぜですか?
- 同じ温度なら、分子 1 個が移動する運動エネルギーの平均が同じです。軽い分子は速いので回数が多く、1 回の強さは小さくなります。重い分子はその逆で、かけると同じになります。
- Q. 気体の温度を −273 °C まで下げると、体積は本当に 0 になりますか?
- なりません。実際の気体は、そこまで冷やす前に液体や固体になります。0 は、理想気体の直線をのばしたときの値です。
- Q. 状態方程式で、質量 g をそのまま n に入れてはいけないのですか?
- n は mol です。質量のときは、モル質量で割って n = w/M にしてから入れます。
- Q. 2 種類の気体が混ざっているときも使えますか?
- 全体の物質量を n にすれば、PV = nRT は混合気体でも成り立ちます。それぞれの気体の圧力(分圧)の計算は、このページでは扱いません。
よくある間違い
- °C のまま比例させる:10 °C から 20 °C で体積 2 倍は誤りです。T に直すと約 1.04 倍です。
- K に直すのを忘れる:PV = nRT の T に 27 を入れるのは誤りで、300 を入れます。
- 温度の差に 273 を足す:温度が 30 °C 上がったら、差は 30 K です。303 K ではありません。
- V と t が比例すると思う:V–t のグラフは原点を通りません。比例するのは V と T です。
- 一定かどうかを確かめない:容器の口が開いていると、気体が出入りして、容器の中の気体の n が変わります。そのままではボイル・シャルルの法則を使えません。
- R と単位がそろっていない:mL や kPa のまま 8.31×10³ に合わせて計算すると、桁がずれます。
- 分子量とモル質量を混ぜる:n = w/M の M は g/mol です。答えを分子量で書くときは、単位をつけません。
検算のこつ 答えを出したら、変化の向きを確かめましょう。体積を小さくしたのに圧力が下がっていたら、式の入れ方が逆です。圧力が一定で温度を上げたのに、体積が減っていても同じです。標準状態の 1 mol が 22.4 L になるかどうかも、R の値と単位の確かめに使えます。
次のステップ
このページでは「なぜそうなるか」を、ピストンを動かして確かめました。次は、問題文から一定の量を読み取って、自分の手で式を立てる段階です。
化学では、このあと混合気体と分圧の法則で、2 種類以上の気体を扱います。全体の物質量で PV = nRT を立てられることが、そのまま使えます。実在気体の話では、理想気体からずれる理由を学びます。ほかの単元は、化学の一覧から選べます。