このページの約束

1まず予想しよう

シミュレーターを動かす前に、直感で答えを選んでください。正解は、操作したあとに開いて確かめます。

予想1 同じ高さから、ボール A を真横に投げると同時に、ボール B を静かに落とします。先に地面に着くのはどちら?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:ウ どちらも、はじめの鉛直方向の速度は 0 で、鉛直方向には重力だけがはたらきます。だから鉛直方向の動きは同じになり、同時に着地します。シミュレーターでは、2 つのボールの高さがずっとそろっています。

予想2 同じ高さから、初速度を 2 倍にして真横に投げます。落下時間はどうなる?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:ウ 落下時間を決めるのは鉛直方向の運動だけで、水平方向の速さは関係しません。初速度を 2 倍にすると、同じ時間で 2 倍遠くまで進みます。「軌跡を残す」ボタンで 2 本を重ねて確かめましょう。

予想3 初速度はそのままで、投げる高さを 4 倍にします。落下時間はどうなる?

答え合わせ(操作のあとに開こう)

正解:ア 落ちる距離は時間の 2 乗に比例するので、時間が 2 倍になると距離は 4 倍です。逆に、高さが 4 倍なら時間は 2 倍です。高さ 4.9 m と 19.6 m で「着地へ」を押して比べてみましょう。

2動かしてみよう

水平投射のシミュレーション図 ボールの位置と軌跡、速度の矢印、比べるボールを表示します。

再生ボタンを押すと、ボールが動きます。

軌跡(実線) 同時に真下へ落としたボール(白丸) 重力がないときのボール(四角) 同じ時刻の位置をそろえる線(点線) 残した軌跡(灰色の破線) v 速度(太い実線) vx 水平成分(破線) vy 鉛直成分(点線) 一定時間ごとの位置

投げ方
m/s
m

初速度は 0〜30 m/s、高さは 1〜100 m(どちらも 0.1 刻み)。数値欄に入力したら Enter で反映します(ほかのボタンを押したときも自動で反映します)。範囲外の値は範囲内に直します。

再生
0.00 s
s
表示

「軌跡を残す」を押してから初速度や高さを変えると、前の軌跡と比べられます(最大 3 本)。

いまの値

時刻 t0.00s
位置 x0.00m
位置 y0.00m
速度 vx0.00m/s
速度 vy0.00m/s
速さ |v|0.00m/s
比べるボール
白丸の y0.00m
四角の x0.00m

vy のマイナスは下向きの意味です。y は白丸(落としたボール)と、x は四角(重力なしのボール)と、いつも同じ値です。

式に数値を入れると

この投げ方の代表値

3観察のポイント

上から順に試して、気づいたことに印をつけていきましょう(印はこの画面の中だけで使い、保存はされません)。

  1. やってみる再生して、青いボールと白丸を見る。○と白丸をつなぐ横の点線も見る。

    見るところ2 つのボールの高さはずっと同じで、同時に着地します。鉛直方向の運動は自由落下と同じです。

  2. やってみる青いボールと四角を見る。○の横の間隔も見る。

    見るところ2 つの横の位置はずっと同じで、○の横の間隔はどこでも等しくなります。水平方向は等速直線運動です。

  3. やってみる高さ 19.6 m のまま、初速度 10 m/s で「代表値」の落下時間と着地直前の速さを見てから「軌跡を残す」を押す。20 m/s に変えて「着地へ」を押し、もう一度「代表値」を見る。

    見るところ落下時間はどちらも 2.00 s で、到達距離は 20 m から 40 m へ 2 倍になります。一方、着地直前の速さは約 22 m/s から約 28 m/s で、2 倍にはなりません。

  4. やってみる初速度はそのままで、高さ 4.9 m と 19.6 m のそれぞれで「着地へ」を押す。

    見るところ落下時間は 1.00 s と 2.00 s です。時間は高さの平方根(√h)に比例するので、高さが 4 倍でも時間は 2 倍にしかなりません。

  5. やってみる「+0.1 s」で少しずつ進めて、3 本の矢印を見る。

    見るところ2 つの成分のうち、vx の矢印の長さは変わらず、vy の矢印だけが長くなります。だから、2 つを合わせた v の向きはだんだん下を向きます。

  6. やってみる初速度を 0 m/s にして再生する。

    見るところ青いボールは真下に落ちて、白丸と重なります。自由落下は、水平投射の初速度が 0 の場合といえます。

4式を書こう:水平投射の公式

手順① 方向ごとに「どんな運動か」を決める

投げたあとのボールにはたらく力は、鉛直下向きの重力だけです。水平方向には力がはたらきません。だから、2 つの方向を別々に考えます。

水平方向(x)

力がはたらかない → 加速度 0 → 等速直線運動

$$v_x = v_0 \quad(\text{一定})$$ $$x = v_0 t$$

鉛直方向(y、上向きが正)

はじめの速度 0、重力だけ → 加速度 −g → 自由落下と同じ

$$v_y = -g t$$ $$y = -\frac{1}{2}g t^2$$

上向きを正にしたので、下へ落ちると y も vy もマイナスになります。鉛直下向きを正にとる説明では、落ちた距離を y として y = ½gt²、vy = gt、地面は y = h と書きます。符号が変わるだけで、求まる時間や距離は同じです。問題を解くときは、最初に「どちらを正にしたか」を決めましょう。

手順② 落下時間と水平到達距離(飛距離)を求める

落下時間 → 条件は「y = −h(地面に着く)」
$$-h = -\frac{1}{2}g T^2 \;\Rightarrow\; T = \sqrt{\frac{2h}{g}}$$

式に v0 が入っていません。落下時間は高さだけで決まります。

水平到達距離(飛距離) → 落下時間のあいだ、等速で進む
$$R = v_0 T = v_0\sqrt{\frac{2h}{g}}$$
着地直前の速さと向き → 2 つの成分を合わせる
$$v_x = v_0$$ $$v_y = -g T = -\sqrt{2gh}$$ $$v = \sqrt{v_x^{\,2} + v_y^{\,2}} = \sqrt{v_0^{\,2} + 2gh}$$ $$\tan\phi = \frac{|v_y|}{v_x} = \frac{\sqrt{2gh}}{v_0}$$

φ は、速度の向きが水平から下へ何度傾いているかを表します(v0 > 0 の場合。v0 = 0 なら真下です)。

軌道の式:なぜ放物線になるのか

軌道の式は、時刻 t を含まない、x と y の関係式です(v0 > 0 の場合)。x = v0t から t = x ÷ v0 として、y の式に入れて t を消します。

$$y = -\frac{1}{2}g\left(\frac{x}{v_0}\right)^{2}$$ $$= -\frac{g}{2v_0^{\,2}}\,x^2$$

y が x の 2 次関数なので、軌道は放物線です。x² の係数がマイナスなので、上に凸の放物線になり、投げた点(原点)が頂点です。

公式の一覧

知りたいもの式決めるもの
時刻 t の位置x = v0t、y = −½gt²v0 と t
時刻 t の速度vx = v0、vy = −gtv0 と t
落下時間 TT = √(2h ÷ g)h だけ
水平到達距離 RR = v0√(2h ÷ g)v0 と h
着地直前の速さv = √(v0² + 2gh)v0 と h

公式を丸暗記しなくても大丈夫です。「水平は等速、鉛直は自由落下と同じ」と「地面は y = −h」の 2 つから、全部作れます。問題を解く順番は、高さから時間を求め、その時間から水平の距離を求める、が基本です。時間 t が、水平と鉛直をつなぎます。

自由落下・斜方投射との違い

どの運動も、投げたあとにはたらく力は重力だけです。違うのは初速度だけで、考え方は「水平方向と鉛直方向に分ける」で共通です。

自由落下水平投射斜方投射
投げ方静かに落とす真横に投げる斜め上に投げる(角 θ)
初速度の水平成分0v0v0cosθ
初速度の鉛直成分00v0sinθ(上向き)
鉛直方向の位置y = −½gt²y = −½gt²y = v0sinθ・t − ½gt²
着地までの時間を決めるもの高さ高さ高さと v0sinθ

表の「高さ」は、投げた点と着地点の高低差です。同じ高さに着地する斜方投射では、着地までの時間は 2v0sinθ ÷ g です。この場合は、斜方投射のページで動かして確かめられます。

5確認問題

g = 9.8 m/s² として計算します。答えは有効数字 2 桁を目安にしてください。解説を開く前に、紙に式を書いてみましょう。

問1〜問4 の条件:高さ 19.6 m のところから、初速度 15 m/s でボールを水平に投げた。

問1 落下時間

ボールが地面に着くまでの時間を求めよ。

解説を見る
$$-19.6 = -\frac{1}{2}\times 9.8\times T^2$$ $$T^2 = 4.0 \;\Rightarrow\; T = 2.0\ \text{s}$$

T > 0 のほうを選びます。初速度 15 m/s は使いません。

問2 水平到達距離

投げた点の真下から、着地点までの水平距離を求めよ。

解説を見る
$$R = v_0 T = 15\times 2.0 = 30\ \text{m}$$

水平方向は等速なので、「速さ × 時間」です。

問3 着地直前の速さ

着地する直前の、速度の鉛直成分の大きさと、速さを求めよ。

解説を見る
$$|v_y| = g T = 9.8\times 2.0$$ $$= 19.6 \approx 20\ \text{m/s}$$ $$v = \sqrt{15^2 + 19.6^2}$$ $$= \sqrt{609.16} \approx 25\ \text{m/s}$$

水平成分は 15 m/s のままです。2 つの成分は直角なので、三平方の定理で合わせます。35 m/s(15 + 19.6 と足した値)にはなりません。

問4 途中の位置

投げてから 1.0 s 後のボールは、投げた点から水平に何 m、下に何 m の位置にあるか答えよ。

解説を見る
$$x = 15\times 1.0 = 15\ \text{m}$$ $$y = -\frac{1}{2}\times 9.8\times 1.0^2 = -4.9\ \text{m}$$

水平に 15 m、下に 4.9 m の位置です。時間は全体の半分ですが、落ちた距離は高さの半分(9.8 m)ではなく、4 分の 1 です。

問5 条件を変える

問1・問2 の投げ方と比べて、(a) 初速度だけを 2 倍にしたとき、(b) 高さだけを 4 倍にしたときの、落下時間と水平到達距離はそれぞれ何倍か。

解説を見る

(a) T = √(2h ÷ g) に v0 は入らないので、落下時間は 1 倍(変わらない)。R = v0T なので、水平到達距離は 2 倍(60 m)。

(b) T は √h に比例するので、落下時間は 2 倍(4.0 s)。R = v0T なので、水平到達距離も 2 倍(60 m)。

問6 初速度を逆算する

高さ 44.1 m のところからボールを水平に投げたところ、投げた点の真下から水平に 60 m 離れた地点に着地した。初速度の大きさを求めよ。

解説を見る
$$-44.1 = -\frac{1}{2}\times 9.8\times T^2$$ $$T^2 = 9.0 \;\Rightarrow\; T = 3.0\ \text{s}$$ $$v_0 = \frac{R}{T} = \frac{60}{3.0} = 20\ \text{m/s}$$

求めるものが水平方向の量でも、時間は鉛直方向から求めます。

水平投射でよくある質問

Q. なぜ水平に投げても、真下に落としたボールと同時に着地するのですか?
鉛直方向の運動が同じだからです。どちらも、はじめの鉛直方向の速度は 0 で、鉛直方向には重力だけがはたらきます。水平方向の速度は、鉛直方向の運動に影響しません(空気抵抗を無視した場合)。
Q. 速く投げたほうが、長く飛んでいるのではないですか?
遠くまで飛ぶので長く飛んでいるように見えますが、落下時間は同じです。速く投げたぶん、同じ時間でより遠くへ進むだけです。「軌跡を残す」で比べてみましょう。
Q. 鉛直下向きを正にしても、いいのですか?
はい。下向きを正にとると y = ½gt² と書けます。符号が変わるだけで、求まる時間や距離は同じです。大事なのは、最初に決めた向きを最後まで変えないことです。このページでは、斜方投射のページとそろえて上向きを正にしています。
Q. 水平投射の公式は、どれを覚えればいいですか?どう使い分けますか?
x = v0t、y = −½gt²、vx = v0、vy = −gt の 4 本で十分です。落下時間や到達距離の式は、この 4 本に「地面は y = −h」の条件を入れれば作れます。求めたい量が水平方向なら x の式、鉛直方向なら y の式を選び、時間 t でつなぎます。
Q. 初速度を 2 倍にすると、着地直前の速さも 2 倍になりますか?
なりません。着地直前の速さは √(v02 + 2gh) で、鉛直方向の速さは初速度で変わらないからです。たとえば高さ 19.6 m で初速度を 15 m/s から 30 m/s にすると、着地直前の速さは約 25 m/s から約 36 m/s で、2 倍にはなりません。
Q. 水平方向の速さは、なぜ途中で遅くならないのですか?
水平方向には力がはたらかないので、加速度の水平成分は 0 で、速度の水平成分は変わりません(水平方向だけを見ると、慣性の法則と同じ考え方です)。現実には空気抵抗で少しずつ遅くなりますが、このページではそれを無視しています。
Q. 着地直前の速さを、力学的エネルギー保存で求めてもいいですか?
はい。空気抵抗を無視し、地面を重力による位置エネルギーの基準にすると、½mv0² + mgh = ½mv² から v = √(v0² + 2gh) となり、成分で求めた結果と一致します。ただし、エネルギーからは速度の向きは分かりません。向きが必要なときは、成分で考えます。
Q. 斜め下に投げるのは、水平投射ですか?
いいえ。水平投射は真横に投げる場合です。斜め下に投げると、はじめから下向きの速度があるので、同じ高さなら落下時間は短くなります。ただし、水平と鉛直に分けて考える方法は同じです。

次のステップ

水平投射の考え方は、斜めに投げる運動にもそのまま使えます。次は、鉛直方向にはじめの速度がある場合を考えてみましょう。

斜方投射を動かしてみる

解説記事:note の解説記事を読む