問1 なめらかな斜面
質量 1.5 kg の物体を、なめらかな斜面の、床から高さ 3.6 m の点で放した。床を基準面として、はじめの位置エネルギーと、斜面の下での速さを求めよ。
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はじめの U は 約 53 J、速さは 8.4 m/s です。速さの式に質量は入りません。
物体が斜面をすべり下りると、高さの分のエネルギーが速さの分に入れ替わります。これを式にしたものが力学的エネルギー保存則です。「基準面はどこに置くのか」「いつ使えるのか」「摩擦があるとどうなるのか」でつまずきやすい単元なので、このページでは、基準面と摩擦係数を自分で動かしながら、運動エネルギー K・位置エネルギー U・熱の積み上げ棒がどう変わるかを見ていきます。水平のばねも、同じ見方で扱えます。
シミュレーターを動かす前に、直感で答えを選んでください。正解は、操作したあとに開いて確かめます。
予想1 なめらかな斜面で、位置エネルギーの基準面を床から 1 m 上に変えます。斜面の下での物体の速さはどうなる?
正解:イ 基準面を変えると U の値はどの点でも同じだけずれます。速さを決めるのは U の差なので、速さは変わりません。基準面より下では U は負になりますが、それで問題ありません。基準面の札を上下に動かして確かめましょう。
予想2 なめらかな斜面で、物体の質量を 2 倍にします。斜面の下での速さはどうなる?
正解:ウ 質量が 2 倍になると、U も K も 2 倍になります。棒は全体に長くなりますが、K と U の入れ替わり方は同じで、速さは変わりません。式では、両辺の m を約分できることに当たります。
予想3 同じ粗さの斜面が 2 つあります。どちらも高さは同じで、一方は急、もう一方はゆるやかです。斜面の下での速さは?
正解:ア なめらかなら、高さだけで決まるので同じです。摩擦があると、熱になる分は道のりで決まります。ゆるやかな斜面は道のりが長く、動摩擦力も大きいので、熱が多くなります。そのぶん K が小さくなります。
予想4 水平のばねを自然長から 0.3 m 縮めました。弾性力による位置エネルギーは、0.3 m 伸ばしたときと比べてどうなる?
正解:ア U = ½kx² は x の 2 乗なので、伸びでも縮みでも正です。ばねが自然長に戻ろうとして仕事ができる分がたまっている、と考えられます。自然長で最小の 0 になる放物線を、「ばね」の場面で見ましょう。
再生ボタンを押すか、グラフの上をなぞると、物体が動きます。
動きの図は、縦横が同じ縮尺です。力の矢印の長さは重力 mg を基準にした比で(動摩擦力の矢印だけ、見やすさのため短くなりすぎないようにしています)、エネルギーの目盛りとは関係ありません。棒の上のはしがいつも合計です。U が負のときは、0 から下に伸びる U を棒の左に出し、K と熱はその値から積みます。
動きの図とグラフは、横方向が同じ目盛りです。図のばねは自然長を 0.70 m として描いています。矢印の長さは最大の値を基準にした比です。点線の四角は、放す位置と反対の端です。
| 時刻 t | 0.00 | s |
|---|---|---|
| 道のり | 0.00 | m |
| 床からの高さ y | 2.50 | m |
| 速さ v | 0.00 | m/s |
| 運動エネルギー K | 0.00 | J |
| 位置エネルギー U | 49.00 | J |
| 熱になった分 | 0.00 | J |
| 力学的エネルギー K + U | 49.00 | J |
| 合計 K + U + 熱 | 49.00 | J |
| 重力がした仕事 | 0.00 | J |
|---|---|---|
| 垂直抗力がした仕事 | 0.00 | J |
| 動摩擦力がした仕事 | 0.00 | J |
3 つの仕事を足すと K になります。小数第 2 位に丸めた値なので、足した結果が 0.01 ずれることがあります。
| 時刻 t | 0.00 | s |
|---|---|---|
| 変位 x(伸び) | 0.30 | m |
| 速度 v(右向きが正) | 0.00 | m/s |
| 弾性力 F(右向きが正) | −15.00 | N |
| 運動エネルギー K | 0.00 | J |
| 弾性力による位置エネルギー U | 2.25 | J |
| 力学的エネルギー K + U | 2.25 | J |
重力と垂直抗力は動く向きに垂直なので、仕事をしません。仕事をするのは弾性力だけです。
上から順に試して、気づいたことに印をつけていきましょう(印はこの画面の中だけで使い、保存はされません)。斜面の場面は、高さ 2.5 m、角度 30°、質量 2.0 kg、なめらか、基準面は床、から始めます。
やってみる「再生」を押す。「斜面の下へ」も押す。
見るところはじめは U = 49.00 J、K = 0.00 J。斜面の下では U = 0.00 J、K = 49.00 J で、速さは 7.00 m/s です。途中のどこでも、棒の上のはしは合計の線に届いています。床に出ると、K も U も変わりません。
やってみる「斜面の下へ」を押してから「結果を残す」。質量を 4.0 kg にして、また「結果を残す」。
見るところK は 49.00 J から 98.00 J になりますが、速さは 7.00 m/s のままです。表の「斜面の下の速さ」が同じになります。
やってみる質量 2.0 kg にもどし、「斜面の下へ」を押してから、基準面の札を上下に動かす。基準面を 1.0 m、次に 4.0 m にする。
見るところ基準面 1.0 m のとき、はじめの U は 29.40 J、斜面の下の U は −19.60 J です。基準面 4.0 m では −29.40 J と −78.40 J です。どちらも差は 49.00 J で、K は 49.00 J、速さは 7.00 m/s のままです。棒は全体が上下にずれるだけで、K の長さは変わりません。
やってみる基準面を 0 にもどし、「粗い」を押す(μ′ = 0.20)。「斜面の下へ」、次に「終わりへ」を押す。
見るところ斜面の下で K = 32.03 J、熱 = 16.97 J、速さは 5.66 m/s です。床で止まるのは斜面の下から 8.17 m の点で、熱は 49.00 J になります。合計の線は動きません。K + U の黒い線は、斜面と床で傾きが変わります。床のほうが垂直抗力が大きく、動摩擦力も大きいからです。
やってみるμ′ = 0.20 のまま、角度を 30° と 45° にして比べる。「斜面の下へ」で「結果を残す」。
見るところ高さは同じ 2.5 m でも、斜面の下までの熱は 16.97 J と 9.80 J、速さは 5.66 m/s と 6.26 m/s です。斜面の長さが 5.00 m と 3.54 m で違うからです。止まる位置は床の上で 8.17 m と 10.00 m ですが、はじめの点からの水平の距離は、どちらも 12.50 m になります。
やってみる「動き出さない例」を押す(角度 30°、μ′ = 0.70)。μ′ を 0.58、0.57 と下げる。
見るところtan 30° ≒ 0.577 なので、μ′ = 0.58 では動き出さず、0.57 ではゆっくり動き出します。動き出さない間は、K も熱も 0.00 J です。静止摩擦は範囲外なので、この判定は静止摩擦係数を μ′ と同じとみなしたものです。
やってみる「水平のばね」を押す(k = 50 N/m、m = 0.5 kg)。変位を +0.30 m と −0.30 m にする。「自然長へ」「反対の端へ」を押す。
見るところどちらも放す位置の U は 2.25 J です。自然長では U = 0.00 J、K = 2.25 J、速さは 3.00 m/s です。放物線から合計の線までの高さが K です。反対の端は自然長から同じ距離で、また U だけになります。
やってみる変位 0.20 m で「結果を残す」。0.40 m にして、また残す。
見るところU の最大は 1.00 J から 4.00 J に、自然長での速さは 2.00 m/s から 4.00 m/s になります。
やってみる変位を 0.30 m にもどし、質量を 0.5 kg から 2.0 kg にして「自然長へ」を押す。
見るところU の最大は 2.25 J で同じですが、速さは 3.00 m/s から 1.50 m/s になります。重力のときは U も m に比例するので m が消えましたが、ばねの U は m によらないので、m は消えません。
一定の力 F が、動く向きに距離 s だけ仕事をすると、運動方程式 F = ma と等加速度の式 v² − v0² = 2as から、次のようになります。
そこで K = ½mv² を運動エネルギーとよびます。「された仕事の分だけ K が変わる」のが、仕事とエネルギーの関係です。
基準面の高さを y0 として、高さ y の物体の位置エネルギーを次のように決めます。ふつう見る U = mgh の h は、基準面からの高さ y − y0 のことです。基準面より下では、負になります。
重力がする仕事は、通った道によらず、高さの差だけで決まります。y0 は引き算で消えるので、基準面をどこにとっても同じ結果になります。
変位 x のとき、ばねの力の大きさは F = k|x| で、伸びまたは縮みの大きさ |x| に比例します。自然長に戻るまでにばねがする仕事は、F-x グラフの三角形の面積です。
x は自然長から測ります。ばねの全体の長さではありません。2 乗なので、伸び(x > 0)でも縮み(x < 0)でも U は正です。U = 0 の位置は自然長に決まっていて、重力の基準面のように動かしません。
重力や弾性力のように、する仕事が途中の道によらず、始点と終点だけで決まる力を保存力といいます。仕事をする力が保存力だけなら、手順①の仕事を手順②、③の U の差で書き直せます。
K + U を力学的エネルギーといいます。これが力学的エネルギー保存則です。
使えるかどうかの判断:はたらく力を全部挙げ、「仕事をするか」を見ます。垂直抗力や振り子の糸の張力は、力の向きが動く向きと垂直(cos 90° = 0)なので、はたらいていても仕事をしません。だから、保存則を使う妨げになりません。動摩擦力は動く向きと逆向きで、負の仕事をします。
基準面の高さを y0 のまま書いてみます。
y0 も m も消えました。だから、基準面や質量を変えても速さは変わりません。角度も入っていません。
x = 0(自然長)で K が最大です。こちらの式では m は消えません。
動摩擦力のように、する仕事が道のりで変わる力を非保存力といいます。保存則の代わりに、次の関係を使います。
動摩擦力の大きさは f′ = μ′N で、道のり ℓ の間の仕事は −f′ℓ です。斜面では N = mg cosθ、床では N = mg です。斜面の長さは h/sinθ なので、斜面の下の速さは次のようになります。
床の上で止まるまでの距離 d も、同じ考え方で求まります。
h/tanθ は斜面の水平の長さなので、止まる点は、はじめの点から水平に h/μ′ のところです。減った力学的エネルギーは、物体と面の熱になります。熱まで入れた全体のエネルギーは保存しています。
動き出す条件:斜面に沿った力を比べると、mg sinθ > μ′mg cosθ、つまり tanθ > μ′ のときに動き続けられます。静止摩擦はこのページの範囲外なので、シミュレーターは静止摩擦係数を μ′ と同じとみなして、tanθ ≦ μ′ なら「動き出さない」としています。
覚えるのは K、U の定義と「始点と終点で K + U を比べる」だけです。そこに「仕事をする非保存力があれば、その仕事を足す」を加えれば、斜面もばねも同じ手順で解けます。
はたらいている力ごとに、仕事をするかどうかを整理します。
| 力 | 仕事をするか | 式での扱い |
|---|---|---|
| 重力 | する(高さの差で決まる) | 保存力。U = mg(y − y0) に入れる |
| ばねの弾性力 | する(変位で決まる) | 保存力。U = ½kx² に入れる |
| 垂直抗力 | しない(動く向きと垂直) | 式に出てこない |
| 振り子の糸の張力 | しない(動く向きと垂直) | 式に出てこない |
| 動摩擦力 | する(負の仕事。道のりで決まる) | 非保存力。保存則は使えず、仕事の分を足す |
| 空気抵抗 | する(負の仕事) | 非保存力。このページでは無視している |
投げたボールにはたらく力は重力だけなので、空気抵抗を無視すれば保存則が使えます。斜方投射の「着地の速さ」が投げたときの速さと同じになるのは、同じ高さなら U が同じで、K も同じになるからです。たとえば初速度 14 m/s なら、角度によらず 14 m/s で着地します。
鉛直投げ上げの最高点も、K が全部 U に変わると考えれば、時刻を使わずに求まります。初速度 14 m/s なら ½m × 14² = m × 9.8 × H から H = 10 m です。高さ 24.5 m から 19.6 m/s で上に投げたときの着地の速さも、√(19.6² + 2 × 9.8 × 24.5) = 29.4 m/s と、エネルギーからすぐに出せます。どれも向きは分かりません。向きや時刻が必要なら、等加速度の式を使います。
斜方投射で確かめる(14 m/s、45°) 投げ上げで確かめる(14 m/s)
はじめのエネルギー、熱になる分、終わりの速さの順に、紙に式を書いて答えてみましょう。g = 9.8 m/s²、答えは有効数字 2 桁くらいで大丈夫です。
g = 9.8 m/s²、物体は静かに放すものとします。答えは有効数字 2 桁を目安にしてください。解説を開く前に、紙に式を書いてみましょう。
質量 1.5 kg の物体を、なめらかな斜面の、床から高さ 3.6 m の点で放した。床を基準面として、はじめの位置エネルギーと、斜面の下での速さを求めよ。
はじめの U は 約 53 J、速さは 8.4 m/s です。速さの式に質量は入りません。
質量 2.0 kg の物体を、なめらかな斜面の、床から高さ 2.5 m の点で放した。基準面を床から 4.0 m 上にとる。はじめの位置エネルギー、斜面の下での位置エネルギー、斜面の下での速さを求めよ。
どちらの U も負ですが、差は 49 J で、床を基準にしたときと同じです。速さも同じ 7.0 m/s になります。
なめらかな水平面で、ばね定数 200 N/m のばねにつないだ質量 0.50 kg の物体を、自然長から 0.20 m 伸ばして放した。はじめの弾性力による位置エネルギー、自然長を通るときの速さ、伸びが 0.10 m のときの速さを求めよ。
U は 4.0 J、自然長で 4.0 m/s、伸び 0.10 m で 約 3.5 m/s です。伸びが半分なので、U は 4 分の 1 の 1.0 J です。速さは半分ではありません。
なめらかな水平面で、ばね定数 80 N/m のばねにつないだ質量 0.80 kg の物体を、自然長から 0.25 m 縮めて放した。自然長を通るときの速さと、自然長から 0.15 m 伸びた位置を通るときの速さを求めよ。
自然長で 2.5 m/s、伸び 0.15 m で 2.0 m/s です。縮みでも U は正で、符号を気にせず x² を計算します。
セットするボタンでは、0.15 m 伸びた位置を、放したあと最初に通るときの図を出します。
質量 2.0 kg の物体を、角度 45°、動摩擦係数 0.20 の粗い斜面の、床から高さ 2.5 m の点で放した。床も同じ動摩擦係数で、斜面となめらかにつながっている。斜面の下までに熱になるエネルギー、斜面の下での速さ、床の上で止まるまでの距離を求めよ。
斜面の長さは 2.5 ÷ sin 45°、動摩擦力は 0.20 × 2.0 × 9.8 × cos 45° です。cos 45° ÷ sin 45° = 1 なので、熱は次のようになります。
熱は 9.8 J、速さは 約 6.3 m/s、止まるまでの距離は 10 m です。止まるまでの熱は、合わせて 49 J です。
動摩擦係数 0.25 の粗い斜面で、床から高さ 4.0 m の点から物体を放す。角度が 45° のときと 30° のときで、斜面の下での速さをそれぞれ求めよ。
手順⑥の式を使います。質量は約分されるので、問題に書いてなくても解けます。
45° で 約 7.7 m/s、30° で 約 6.7 m/s です。斜面の長さは約 5.7 m と 8.0 m で、ゆるやかなほうが長く、熱が多くなります。tan 45° = 1、tan 30° ≒ 0.577 はどちらも 0.25 より大きいので、どちらも動き出します。
セットするボタンでは、質量を 1.0 kg にしています。
次の (a)〜(c) のうち、力学的エネルギー保存則をそのまま使えるものを選べ。また、(a) で、おもりを最下点より 0.90 m 高い位置で放したとき、最下点での速さを求めよ。空気抵抗は無視する。
使えるのは (a) だけです。糸の張力は動く向きと垂直なので仕事をせず、仕事をするのは重力だけです。(b) と (c) では動摩擦力が負の仕事をします。
速さは 4.2 m/s です。高さの差が同じなら、なめらかな斜面と同じ結果になります。糸の長さや質量は、速さの計算には要りません。
エネルギーで見られるようになったら、ほかの運動でも確かめてみましょう。斜方投射の「着地の速さ」は、保存則の使える例です。
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